||Φ|(T|T|)|Φ||    監獄☆日記    ||Φ|(T|T|)|Φ|| -33ページ目

TB眞鍋かをりブログ。

 献血ルームで荷物をロッカーに入れようとしたところ、

 中から小さな声で 「ママー! ママー!」と聞こえてくる。


 びっくりしてキョロキョロ見回したが、やはり「ママー! ママー!」と聞こえる。

 

 受付の人に、子供の声が聞こえるんですけど、と聞くと、

 あ、コイツですコイツ、とバンバン叩いた。

 

 なんのことはない。

 「ハロー! ハロー!」としゃべる、ハローキティのぬいぐるみだった。

平成16年6月5日(土) 勾留26日目

 朝飯のおかず、煮付け(がんもどき、高野豆腐、こんにゃく)、タクアン、こんぶつくだに少々、のり。

 昼飯のおかず、アジフライ、マカロニ、小松菜煮びたし、カレー、ミックスベジタブル。

 晩飯のおかず、お好み焼き(小)、焼きビーフンケチャップ味、揚げギョーザ1個、いんげんソテー。

 

 こうして並べれば一見豪華そうだが、なんのことはない、ただの仕出し弁当だ。

 ごはんもおかずも冷え切っているし、量も少ない。

 しかしこれももとはと言えば、すべて自分が招いたこと…。

 感謝していただいている。

 

 保険金詐欺は、トイレットペーパーを作るのが好きだ。

 各房には、「花の山」というブランドの、正方形のいわゆる「ちり紙」が、ひとつかみ渡される。それを2枚重ねて2つに折れば、トイレ用となる。それを保険金詐欺は、よく作っているのだ。

 足りなくなればもらうのだが、それは私の役目だ。「ちり紙くださーい」と看守台に向かって叫べば、看守が持ってきてくれる。

 

 保険金詐欺は、昨日の取調べに憤慨している。

 ウソの供述をした共犯の言い分を真に受けた刑事から、やっていないことまで認めろと迫られ、「認めれば捜査を終わりにしてやる」と、半ば脅されているのだ。

 

 「絶対に起訴しないから」とも言われたそうだが、「バカヤロー、てめえらの言うことなんか信用できるか!」と、啖呵を切ってきたという。

 課長の名前で一筆書いたら信じてもいい、と持ちかけると、「それはできない」とのことだったらしい。

 「ウソつきは警察官のはじまり」は、保険金詐欺の名言だ。

 

 監獄の週末には、何もすることがない。

 面会もできなければ、手紙の受発信もできない。

 定員3人の房に4人が押し込まれ、身動きすらままならず、ストレスとイライラはピークだ。

 

 おやつの時間、男が他の3人に、菓子を1袋ずつくれた。来てすぐ、彼におやつがまだなかったときに、皆で分け与えたことがあったのだ。

 「こういうところでは、モノが大事だからね」と、かなり義理堅い。

 少し口を利くようになり、証拠書類不同意の話をしてくれた。

 

 

 【余白メモ】

 

 仕出し弁当だけで、よく生きているものだと思う。

 

平成16年6月4日(金) 勾留25日目

 男に質問をした。

 「私はシャバでいろいろとやりかけのことがあったんですが、それが突然の逮捕でぶち切られてしまったことが、多々あるんです。そういうのって、出てからすぐまたつながるもんですかね?」。

 

 答えはこうだった。

 「人それぞれだから、一般的には、言えない。あえて言えば、『あとは野となれ』だ。絶対につながらないモンもあれば、すぐつながるモンもある」。

 「たら、れば、を考えないことだ。次に活かせりゃいいが、そうじゃなけりゃ、時間とエネルギーの無駄遣いだ」。

 

 「あとは野となれ」という言葉は、ゾッとすると同時に、ここでは、これ以上はないというほどの至言だ。


 私も、他の人間も、それなりに社会生活を営み、その中には会社があり、家庭があり、会社の人間関係があり、私的な人間関係があり、給料を受け取り、公共料金を支払い、家賃を納め、食事をし、掃除をして、恋愛などもしてきた。

 

 これらを全部内側にくるんだ「流れ」があり、それは確かに流れていたが、逮捕によりそれは急激にぶった切られた。

 そしてそれが法律により強力な強制力を持っている以上、我々はここや刑務所に押し込められ、しかるべき時が来るまでは、それが何年、何十年先になろうが、出られないのである。

 

 我々は、「生活の切れはし」を警察署の外に置いてきている。

 もう我々には関与できないその切れはしが、「野となり山となる」のである。

 例えば好きな人に自分の存在を忘れられてしまうようなことが、怖い。

 

 運動の時間、特定商取引法違反に、公共料金はどうなっているのかと聞いた。

 自動引き落としにしてあるので、そっちはたぶん大丈夫だと言っていた。ただ、TSUTAYAで借りっぱなしになっているDVDがあるらしい。実家は山梨で、簡単には親も面会に来られないのだという。

 

 内縁の妻を空手チョップで失明寸前に追い込んだ42歳傷害犯は、10日で早々と起訴された。

 

 ヤクザは検事調べ、保険金詐欺は刑事調べ、男は病院(足に怪我を負っているようだ)で、私は期せずして、房に1人になった。

 

 少し落ち着かない。

 

 私は、孤独を愛する淋しがり屋なのだ。

 

 

 【余白メモ】

 

 私はコンビニ払いだ。


 坊主頭にはしない誓い → 起訴後は坊主にできる

 

 かし食いすぎた

 


 【過去の過ちを振り返って】

  

 この日特定商取引法違反と、「カッコ悪いから、坊主にするのはやめようね」と誓い合ったのだった。

 私は生まれてから一度も、坊主頭にしたことがなく、不安だったというのもある。 

 勾留が長引いてくると、髪が伸び、鬱陶しくて、不衛生でどうしようもない。

 5日に1度の入浴では、髪は油分でベトベトのバサバサだ。

 起訴後は、「不衛生なので自分の意思で坊主にします(むりやりやられたのではありません)」と一筆書いて、看守がバリカンで坊主に刈ってくれる。

 5人以上集まれば、外部から床屋を呼べる規定もあるそうだが(1人5,000円だとか)、留置場内では刃物類が使えないから床屋もバリカンでやることになるため、嫌がって来たがらないのだそうだ。

  

 

 【 昨日の超絶アクセスのわけ 】

 

 「まぐまぐ」で、「監獄☆日記」 メール版 を始めたからです。

 メルマガ版には、ブログ版とは少し違うことも書いています。

  ID 0000158986  です。

 ご興味のある方は、併せてお読み下さい。

「全国矯正展」に潜む罠

 「第47回全国矯正展」が、科学技術館で開かれている。


 手元の資料によれば、どうも「女子刑務所の模擬房」「女子刑務所の刑務作業体験」といった、女子刑務所に焦点を当てた展示が目に付く。

 

 全国に5つしかない女子刑務所ばかりに焦点を当てるのは、日本国憲法に定める「両性の本質的平等」に照らして考えてみても、フェアではない。

 では、なぜか?

 

 「大衆に知られたくない真実がそこにある」からだ、と私は考える。

 

 元女子刑務所刑務官、藤木美奈子氏の著作などによれば、女子刑務所の処遇は、相当にゆるい。

 刑務官と日常会話を交わしたり、軽口を叩いたり、嬌声を上げたりするのは日常茶飯事だ。

 時おりテレビ番組で、深く罪を悔いる彼女たちの姿とは逆の、明るい彼女たちの姿がそこにはあるのだという。

 

 では、男子刑務所はどうか?

  

 「懲罰」。

 背筋を伸ばした姿勢の正座のまま、日の出から日没までを過ごさせられるもの。

 喧嘩などはもちろん、刑務官と目が合ったり、作業中に許可を得ず喋ったりしても、懲罰だ。

 「戒具」。

 左手を腹の前、右手を後ろに回した姿で拘束され、足は正座。食事はその姿勢のまま、犬のように食う。

 「虐待」。

 名古屋刑務所では、肛門からホースで水を送り込まれた受刑者が、腸管破裂で死んだ。

 

 闇が、そこにはある。

 国家が大衆に知られたくない、前近代的な闇だ。

 

 そこに、全国矯正展の意味はある。

 大衆に真実を知られないための、プロパガンダである。 

平成16年6月3日(木) 勾留24日目

 昨晩、就寝前の洗面時間、寡黙な男が怒った。看守に対してだ。

 男はナザールという鼻炎用スプレーの購入を願い出ていたのだが、理由も示されずに却下され、またおそらく新任であろう幼い看守の、口の利き方が横柄だと怒ったのだ。

 

 激情に任せて怒鳴り散らすわけではなく、理路整然としていて、自分の意思を正確に相手に伝えようとしているように、私には見えた。

 当直の刑事がゾロゾロと何十人も集まってきていたが、怯む様子はない。

 犯罪者には珍しいタイプで、筋が通っているものだから、看守も言い分を聞かざるを得ない。

 で、看守の男に対する態度と扱いが、極端に変わった。

 ナザールも近所のドラッグストアで、その晩のうちに看守によって買ってこられた。

 

 私は逮捕から3週間以上も、コンタクトレンズを外していない。

 しかし昨夜は同房のヤクザの厚意で、洗浄液を貸してもらい、久しぶりに外して眠ることができた。

 でもいつまでも借りているわけにはいかないし、基本的に留置場で物の貸し借りはよくないということで、例のイケメン看守が近所のドラッグストアで買ってきてくれることになった。

 そこで私は、「NEWコンプリート」を頼んだのだが、NEWは売り切れだったということで、普通のコンプリートだった。とりあえず今夜からは、眼病の心配なく眠れそうだ。

 

 隣の房の中国人が、裁判に行った。

 バス運転手を殴ったうえに、偽造運転免許証と偽造パスポートを所持していた男だ。

 私は一度、風呂で一緒になったことがある。包茎だった。

 看守同士の話を漏れ聞くところでは、判決は懲役2年6月の執行猶予5年、よって強制送還だ。

 

 たまらなく、外へ出たいなあと思う。

 保険金詐欺が、「1か月目ぐらいがいちばん辛かった」と言っていた。

 揚げ物の多い仕出し弁当然り、精神的な辛さ然り。

 

 そして私も、今が本当に辛い。

 

 男が、いくつかの辛さと不自由さに耐えるのは、ここでは当たり前のことだと言っていた。


 1.退屈に耐える  2.空腹感に耐える  3.不自由さに耐える

 

 

 【余白メモ】

 

 残金 1,029円

 

 

 【過去の過ちを振り返って】

 

 外国人の場合、懲役刑ならば日本で服役してからの強制送還、執行猶予ならば直ちに強制送還となる。

 傍聴席に入管職員が待機していて、判決の言渡し後、身柄を刑務官なり警察官なりから引き受け、入管へ移送するのである。

 不法滞在中国人が保険金詐欺への手紙で伝えてきたところによると、入管では国際電話が使用できたり、コーヒーやタバコを喫食できたり、シャワーが毎日使えたりするという。

疑問・質問にお答えします!

 勾留も長引き、善良な皆様には留置場での生活に、知りたいことや疑問も浮かぶかと

存じます。


 そんな疑問にお答えいたしますので、コメントとして、気兼ねなくお書き込みください。

 コメントでお答えさせていただきます。

平成16年6月2日(水) 勾留23日目

 ××(受験予備校)に、いつまでも迷惑を掛けられない。

 別に私が来なくなったところで困りはしないだろうが、私の分の教材が、宙に浮いてしまうだろう。

 そこで、○○先生に、手紙を書くことにした。


 住所は、「○○-△△-×× ○○先生」という、うろ覚えのものだ。

 届くといいが・・・。○○先生に嫌われなければいいが・・・。

 他、私をかわいがってくれていた、元上司に1通。


 同房者に借りたエロ雑誌のグラビアが、○○さんに似ていて、興奮した。

 

 

 

 【過去の過ちを振り返って】

 

 ○○さんとは、この予備校で同級生だったOLである。

 

平成16年6月1日(火) 勾留22日目

 やはり書かねばなるまい。結果は、「起訴」だ。

 私は、忘れない。

 結果が出るまでの焦燥と、結果が出たあとの深い敗北感を、だ。

 警察に負けたのでも、被害者に負けたのでもない。

 自分の、人生に、敗けたのだ。

 

 

                  kisojo


 

 

 【過去の過ちを振り返って】

 

 明日からのこの日記は、不思議な展開を見せはじめる。

 もちろん挫折とか敗北とかは、ないほうがいいに決まっている。

 せずに、感じずに生きられれば、それがいちばん幸せだ。

 しかし人生には、時として、挫折も敗北もあるが、それもそれほど悪いものではない…というテイストを、感じていただければ、と思う。

平成16年5月31日(月) 勾留21日目

 朝飯を食い終わってすぐ、看守が「今日検事調べだから運動して」と呼びに来た。

 ひげそりをして、腰縄付きの手錠を掛けられる。

 手錠の中心は輪になっていて、一列に並んだ前の人からその輪にロープを通していき、ロープの両端は護送警官の腰につながれる。

 そしてバスまで移動するのだが、まるでその様子は、たちの悪い電車ゴッコだ。

 

 区検に着き、例の鉄格子の小部屋(同行室という)に押し込められる。

 7人・3人・3人という房があり、今日私は3人のほうで、同じ警察署の人と一緒だった。

 38歳自営業者の彼は、公務執行妨害での逮捕だ。

 飲酒運転中に取り締まりに遭い、その調書を破いたのだという。

  「『名前は?』っつーからさ、『なんでだよ、さっき答えただろ』っつったらそのオマワリ、名前の欄に『なんで』って書きやがってさ、『馬鹿野郎、作り直せ』って取り上げて破いたら、逮捕されたんだよ」と言っていた。


 11:00~12:20 調べ。13:10~15:30 調べ。

 正直な話検事調書は、「一体今まで人の話を何聞いてたんだ」と思わざるを得ないぐらい、ひどいシロモノだった。事実関係の誤りはもとより、検事にインターネットに関する知識がほとんどなく、記載もメチャクチャだ。

 念仏のような読み聞かせのあと、事実及び警察調書と大きく異なる2点だけ、訂正してもらった。

 検事調書は裁判での証拠となることぐらい、私も分かっている。しかしこの検察事務官上がりの副検事は、逆らうと途端に機嫌が悪くなるのだ。だから、思ったことが言えない。

 任意性もへったくれもない。世の中は思った以上に、不条理に満ちているのだ。

 

 同行室に戻ると、自営業のかわりに中国人が入っていた。

 日本語が下手でよくわからなかったのだが、偽造パスポートのあっせんで捕まったらしい。

 34歳で、日本では日給13,000円の解体屋の仕事をしていたらしいが、パチスロにはまり、給料は全部使ってしまったのだという。

 中国には妻と13歳、4歳の子供がいるらしいが、仕送りもしていなかったらしい。

 

 その中国人のところに看守が来て、「じゃあ起訴されましたのでね、これ起訴状です。で、10日間の勾留延長がつきましたから」と書類を見せたのだが、日本語が不自由なため、「あと10日いるだけでいいのだ」と勘違いしたらしく、ぬか喜びしていたのだが、その後通訳から説明を聞いて、ひどく落ち込んでいた。

 

 4時、5時と時間が過ぎていく。

 午後5時半になりました、という市内アナウンスを聞いて、私は全てが終わったことを知った。

 今日は、起訴も不起訴も何もなかった。全ては、勾留満期の明日に持ち越しだ。

 

 留置場に戻ったのは、6時半を過ぎていた。

 それから飯を食って、風呂だった。

 すでに入浴は済んでいるということもあって、検察庁に行っていた3人は1人ずつ、ゆっくり入らせてくれた。

 私は1人なのをいいことに、浴槽の中で爪で垢をこすったり、胸毛を抜いたり、小便をしたりした。

 場内で1,2のモラリストを自認する私もこうなのだから、きっと他の連中もやっているだろう。

 

 9時消灯。

 ふてくされて、寝た。

 

 

 

 【過去の過ちを振り返って】

 

 自営業は留置場にいたので、この月末、資金繰りが回らなくなった恐れがあるそうだ。

 家族もいて、本当に追い込まれているようだった。

 


平成16年5月30日(日) 勾留20日目

 件(くだん)の寡黙な男は、例えばふとん部屋や、運動の時間にほかの2人が先に行ったときといった、私と2人きりになったときだけ、何を気に入ったのか、私だけに話しかけてくる。


 「イビキは、気にしなくていいからね・・・・・・。人それぞれだから・・・・・・」

 「(同室のヤクザを)スミ入ってたって、テキヤと変わらないよ・・・・・・」

 「どこだろうが、己を貫き通す・・・・・・」

 

 刈り込まれた短髪に広い肩幅、ドスの効いた声と深い眉間の皺・・・。

 36.7才といったところか。もしかしたら、40にいっているかもしれない。

 両手のひらだけが日に焼けていないのは、おそらく土木作業の軍手のせいだ。

 そして例のトラベルセットと石けん箱、着古して汚れた服は、漂泊の象徴だ。

 日雇いの逃亡生活を送っていたのだろうか。

 

 昨日は午後早くに調べに出され、消灯近くまで、帰ってこなかった。

 晩飯の時間は2時間もずらされ、空腹もこたえたはずだし、こういう荒っぽい取調べは異例だ。

 たぶん、完全黙秘したのだろう。

 

 この留置場には、○○新聞の朝刊が入ってくる。全員で回し読みをする。

 記事が黒く塗りつぶされている場合がある。

 そういう場合は、本人がこの留置場にいるか、共犯が捕まったかの、どちらかだ。

 

 新聞を読んで昼飯。昼寝。3時のおやつ。昼寝。晩飯。

 明日、私は釈放されるのだろうか。

 だとしたら、何時になるのだろうか。

 社労士試験申込締切りに、間に合うだろうか。

 

 今まで何度も繰り返してきた問いが、頭から離れない。

 よい結果を期待する気持ちと、期待したくない気持ちが、大きく揺れ動いている。

 手のひらと足の裏、脇の下にジットリと汗をかき、心臓がドキドキして、喉が渇く。

 よい結果を期待したくないのは、裏切られるのが、怖いからだ。


 まったく寝付けず、空が明るくなってきたころ少しウトウトして、31日の起床の時間を迎えた。

 

 

 【余白メモ】

 

 特定商取引法違反が起訴された。

 


 【過去の過ちを振り返って】

 

 デパートの警備員を殴ったヤクザが入ってきている。

 同房者を整理すると、保険金詐欺・ヤクザ・謎の男・私の4人。