||Φ|(T|T|)|Φ||    監獄☆日記    ||Φ|(T|T|)|Φ|| -34ページ目

平成16年5月29日(土) 勾留19日目

 今日は、言わずと知れた××(受験予備校)の日だ。

 今は何時なんだろう? 14時ぐらいにはなっているのかもしれない(場内に時計はない。知りたいときは、看守に聞く)。

 前2週はつらかったが、もう平気だ。


 昨日は明け方まで眠れなかった。不安でではなく、期待で、である。

 それというのもみんながここ数日、妙なことを言うからだ。


 担当刑事 「君は今まで真面目にやってたからもうすぐ出られると思うけど」

 刑事から伝え聞いた検事の弁 「まあ本人も反省してるからねぇ」

 留置管理課長 「あなたのような罪の人は、早く出られる可能性が高い」

 留置管理係長 「薬なくなる前にもらってきてやるからな。まあ、あまり長くなってもあれだけどな」


 これらの言葉の意味する言葉は、一体何だ?

 反面、また、担当刑事の言葉である。


 「今日で調べは終了。今後は追送致という手続きを取る。まあそれも合わせて審理していくと思うんだけど」

 「それは裁判で言って」


 これらの相反する言葉を考え合わせた場合、私は全く、訳が分からなくなってくるのである。

 「もうすぐ」「早く」とは、いつを指しているのだろう。

 勾留満期の6月1日なのか、起訴後結審したときなのか。


 1日で結審し、執行猶予がつくという前提ならば、起訴後約2ヶ月で釈放であるが、実際のところ他房には、再逮捕を繰り返され、かつ追起訴が続き捜査が終わらず、何ヶ月も閉じ込められている人もいるわけで、それに比べれば2ヶ月だって長いとは言えず、十分「もうすぐ」の範囲内なのである。


 刑事が、「次の検事調べは31日の月曜」だと言っていた。

 勾留満期は6月1日だが、どうせならこの日に決定してくれと思う。

 不起訴・起訴猶予・罰金なら、釈放だ。

 そして実際、釈放になる場合には、満期を待たないことも多いのである。

 私が今年の社会保険労務士試験を受けられるかどうかは、この日に決定すると言っていい。

 

 昼飯の前に、短い調べがあった。

 昨日で終わったはずなのに何だろう・・・と、かなり緊張しながら行くと、調書の訂正という簡単なものだった。

 コンビニで買ったカフェラテを飲ませてくれ、「絶対人に言うなよ」と、プリンを食わせてくれた。

 基本的に飲み物はお茶という建前だが、実際には多くの刑事がポケットマネーでジュースを振舞う。

 それだけでも厚遇なのに、食い物とは何事かというわけだ。

 あとは、雑談。

 

 この長身痩躯の刑事は背が186センチもあること、33歳であること、妻あり子なしであることなどを知った。

 こづかいはどれぐらいですかと聞いたら、「5万くらいかな。足りなくなったらちょうだいって言ってもらうんだよ」と言っていた。

 「セイハンだけはするなよ」と言われた。「セイハン?」と聞き返すと、「性犯罪。性犯はなげーぞ」と釘を刺された。

 私は、そんなふうに見えるのだろうか(ガサのときエロDVDとかたくさん見つかっただろうし、PCにもHDにもエロ写真すごいからなぁ)。

 

 意識がどうしても、週明けに行く。胸がドキドキする。

 

第47回 全国矯正展のお知らせ。

 「第47回 全国矯正展」  が、来る6月3日~4日に、科学技術館において、藤原紀香を迎え、開かれます。

 

 刑務作業での製品の即売会を始め、行刑施設の紹介や、女子刑務所紹介コーナーでは刑務作業の体験も行えるそうです(…って悪趣味な気がするけど)。

 模擬房とかもあり、面白そうです。

 

 お近くの方は行ってみてはいかがでしょう。

 

 ついでに以下の本もお勧めしておきます。

 

 

実録!刑務所

平成16年5月28日(金) 勾留18日目

 朝の運動後すぐに、調べがあった。

 犯行時着用していた服についての調書を1本と、内心面を問答形式で記したものの調書を1本で、これで本件についての調べは終了となり、月曜の検事調べで起訴などの処分が決定する。

 余罪は「追送致」という手続きに依るそうだ。


 なげやりな意味ではなく、「どうにでもなれ」という気がする。それはよく言えば「どのような結果であろうが甘受する」ということだ。

 

 警察に捕らわれた者は、文字通り「まな板の鯉」だ。

 その生死を含めた全ての処遇や処分は、司直の手に委ねられる。

 そして、今まで当たり前のように享受してきた、種々の「自由」を基本とした基本的人権の多くは、厳しく制限される。

 この「不安定さ」と「不自由さ」に辟易せず、懲りずに繰り返す奴は馬鹿だ。


 その昔太宰治は「縄目の恥辱」と書いたが、その意味も含めて、少なくとも私にはもうこりごりだ。

 もう私はこの鉄格子と金網の内側に入ることは二度とないだろうし、そうあることを強く望む。

 

 昨晩遅くに入ってきた男は寡黙に過ぎ、一言もしゃべらない。

 しかし枕の位置を皆と逆にしたり、洗髪禁止なのに洗面台(小学校の手洗い場みたいだ)で洗髪したりするところをみると、監獄慣れしているのだろうか。

 歯ブラシ歯磨きのトラベルセットと、石けん箱などを所持していたあたりは、長い漂泊を感じさせるに十分だ。足も垢じみていて、臭い。

 

 朝の運動のとき、留置管理課長がこっそりと耳打ちしてくれた。

 「しゃくに障ることを言うと、キレるタイプのようらしい。うっかり喧嘩になったりすると出るのが遅くなるから、くれぐれも気をつけなさい」。

 

 

                    zennmen

                         警察庁ホームページより

                (留置室前の洗面台。基本的に洗髪禁止。

                   左は看守台。通常は一段高くなっている。)

 

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 【過去の過ちを振り返って】

 

 両端の房は、看守台からは死角になるため、房内の様子が見えない。

 よって両端の房には、知能犯や痴漢、窃盗、オーバーステイ、ホームレスといった比較的おとなしい人間が収容される。

 逆に看守台から常時監視できる中央の房には、暴行や傷害、ヤクザや右翼といった、粗暴犯的な人間が収容される(実際ケンカ騒ぎを起こすのは常に中央の房だった)。

 私がいたところの正面側に窓はなく、背中側通路にあるにはあったが、目隠しがされているので、外の風景は場内からは一切見えない。

 警察署を外から見て、一部だけ窓が全面ふさがれている箇所があったとしたら、そこが留置場だ。

平成16年5月27日(木) 勾留17日目

 昨夜のインド人は、一夜で別房に移った。

 別房の特定商取引法違反は、今日は検事調べのようだ。

 私と同じ日に逮捕されたというのに、向こうは連日の朝から晩までの苛烈な取調べで、やつれていた。


 私はといえば相変わらずあったりなかったりで、あっても短い。

 刑事が、「今日は1時間勝負」などといって、1時間程度で終わってしまう。

 本当に退屈な日常、調べがあったほうが、時間が経つのが早いのだが・・・。

 

 保険金詐欺が手紙をしたためている。金の無心だ。

 兄弟に金を差し入れてくれと頼んでいたようだが無視され、今は知人に当たっている。

 

 書き出しはどうするのだろうか。 というのも、私も○○先生に連絡することを考えているからだ。

 といっても、金の無心ではない。答練の問題を送ってもらえないだろうかという話だ。


 私は初犯だし、6月1日に起訴になっても、執行猶予がつくかもしれない。

 そうなれば、ギリギリ試験には間に合うかもしれない。

 全ては「かもしれない」だが、やはり一応の準備はしておきたいのだ。

 兄は受験申し込みを、してくれない「かもしれない」が。

 

 書き出しはどうしよう。

 やはり、「前略 突然ですが、私は今留置場におります」と書くしかないだろうか。

 

 

 【余白メモ】

 

 人間は、時として、充たされるか充たされぬか、わからない欲望の為に、一生を捧げてしまう。

 その愚を哂(わら)う者は、畢竟(ひっきょう)、人生に対する路傍の人に過ぎない。

 

                                          By  芥川龍之介 「芋粥」

 

 

 【過去の過ちを振り返って】


 昨日兄が持ってきた手紙は、非常に私を苛立たせるものだった。

 来てくれたのは次兄だったが、長兄の手紙に激怒したのだった。

 激怒といってもたかが知れている。自由を奪われているのだから、カッカカッカ来るだけだ。

 ひどく説教臭いその手紙に、私は、「自分に酔ってるんじゃねえのか?」という返事を書き、それは今日まで禍根を残すこととなる。

 他人である上司の手紙に涙し、肉親である兄の手紙には憤る。

 家族関係とは、かくも難しいものであるか。

 肉親に対しては、依存心と反発心、遠慮と無遠慮、愛着と憎悪といった相反する気持ちがないまぜになり、自分でもどういう決着をつけたいのかが、分からない。

 

 

 【長兄からの手紙】

 

 探したのだが見つからない。破り捨てたのかもしれない。

  

 

 

 【特定商取引法違反】

 

 私と同日に逮捕された彼の罪名は、「特定商取引法違反+詐欺」である。

 埼玉で先日あった、認知症の姉妹にリフォーム業者が押し寄せて云々という、あんな感じである。

 DIYで数千円で買える、床下を支える工具? を言葉巧みに取り付け、数百万を請求したそうだ。

 どういう仕組みになっているのかはわからないが、やはりその家にも次から次へと業者が押し寄せたらしい。

 彼は下っ端で、社長は逃げたという。

 朝から晩まで連日、厳しく追及されているが、彼は単なる下っ端だったから、肝心なことは何も知らされていなかっただろう。

 


平成16年5月26日(水) 勾留16日目

 昨晩、オーバーステイ3年のインド人が同じ房に入ってきた。

 担当さんの話では、「英語・日本語少々」とのことだったが、どちらも「ほとんどダメ」という状態に近い。

 

 「なぜ自分だけふとんにシーツがないのだろう」、「なぜ自分には歯磨きがないのだろう」など、不安は尽きないと思うが、まあ仕方がない。言葉が通じないということは、教えてあげられないのだから。

 

 何とか聞き出したところによると、ジャム州とカシミール州の州境近くの出身で、1978年より軍人だったそうだ。日本では「ヒロシ」という通名を持っていたが、どうみてもヒロシという顔ではない。濃い。

 タイヤは何層からか成っているそうで、古タイヤに別の古タイヤからはがした層を貼り付けるとリサイクルができ、それをアジアに輸出するという。

 そのタイヤを作る工場で不法就労していたのだ。 

 

 そして夜遅く、Tシャツ4枚と手紙2通、切手4枚を持って、兄が来た(面会時間はとっくに終わっていて、荷物だけ預けていった)。

 もう遅いので、手紙は明日読ませてくれるという。

 

 

 【過去の過ちを振り返って】

 

 当初の48時間以内に送検され、10日間の勾留が付くと、ふとんシーツと枕カバーがもらえる。

 警察もシーツ交換が面倒だからだろう(ちなみにその後は1か月に1度交換)。

 

平成16年5月25日(火) 勾留15日目

 今日は不法滞在中国人の裁判の日だ。そしてその後、入管に向かう。

 なぜもう分かるのかというと、拘置所や入管、あるいは釈放(パイ)の人には、朝方やその前の晩に、「荷物まとめといて」「ふとんのシーツはがしといて」などの、指示があるからだ。

 

 不法滞在には、「面倒見のよい人はトクをする」ということと、「人との出会いを大切にする」ということを教えてもらった。約10年、人との出会いを粗末にしてきた俺は大馬鹿者だ。

 

 イケメンの看守が、不法滞在に「中国では、子供はどこから生まれるのって聞かれたら、なんて答えるの?」と聞いていた。彼女とその話で盛り上がるのだろうか。

 「木のまたから生まれるとか、橋の下で拾うとか、鳥が運んでくるとかいう。おまんこから生まれるとは、はっきり言わない」とのことだった。

 

 15時過ぎ、健康診断があった。2週間に1度あるという。

 聴音、脈拍のみの簡単なものだったが、私は懸案だったジルテックの処方を申し出た。

 ジルテックはないとのことだったので、他の抗ヒスタミン薬を探してくれるということになった。

 あと、どうにも痰のからむ感じが取れず、ムコダインもくださいと言っておいた。

 保険金詐欺は目薬の処方を申し出たが、駄目だったようだ。

 

 文庫本を2冊重ね、自分のTシャツでくるんで枕にして昼寝したら、寝違えた。

 

 

 【余白メモ】

 

  芥川の短編 「アグニの娘」 を読んだが、途中ページがなくなっていた。


 「破壊をやめ建設を案ずることは、真の建設ではないと察する」

 

 

平成16年5月24日(月) 勾留14日目

 月曜日になった。だからといって基本的には何も変わらない「食っては寝る」の繰り返しなのだが、平日は検察庁行きなどがあるので、雰囲気が慌しく、この方が「時間が過ぎている」という実感がある。


 今日はひげそり・つめきり・耳かきの日でもある。が、正直ウイルス感染が怖い。

 不法滞在中国人はHBV(B型肝炎)キャリア(保菌者)だし、空手チョップはHCV(C型肝炎)キャリアだと言っていた(刺青、タトゥーは針から感染する)。


 唯一の自衛手段は、「傷をつけないこと」に尽きるだろう。ウイルスは、傷口から多く感染するからだ。

 つめは、深爪して血を出さないように。親指にはあかぎれを作らないように。ひげそりで傷をつけないように。など、数え上げればきりがない。

 また、ほんのわずかの日照ではあるが、日光にも当たるようにしている。日光がないと、体内時計が狂うし、ビタミンDが合成されない。


 房内では、水も自由に飲めない。担当さんに言って、共用のコップに水を汲んできてもらう。

 だが、なるべく汲む前にコップをよくゆすいでくれる担当さんにお願いするようにしている。

 30人超の被留置者に対して、共用のコップは3つしかないからだ。


 午後、会社の○○さんから手紙をもらった。

 会社には、というか、○○さんには本当に申し訳ないことをした、と思う。

 ○○さんは50代半ばだが子供がおらず、私のことを息子のようにかわいがってくれていた。今回も忙しい中、これだけの筆を執ってくれた。迷惑の掛け通しだ。

 「あちらを立てればこちらが立たず」という。社会はどこかでつながっている。

 一方で利己心を満足させながら、会社でもうまくやる、「あちらを立ててこちらも立てる」などというわけには、いかなかった。

 封筒には、自宅の住所が書かれている。

 達筆の直筆の、見慣れた筆跡を眺めていると、自分の情けなさに、涙が滲んだ。

  

 

 【余白メモ】

 

 兄に手紙〔出〕      ○○さんに手紙〔出〕    発信 1日2通まで


 ※ 留置場は、仕事をしなくても3食食べられて、雨風もしのげる。

    なんか矛盾してるなぁ。

 

 

 【 ○○さんからの手紙 】

  

 前略

 先日、××警察署の○○様から御連絡を頂いた時は、本当に驚きました。「頭をハンマーで殴られた」様な気持ちでいっぱいでした。

 私は○○君には、「大きな期待」「信頼」をしていたので、本当に残念で仕方ありません。

 今はお客様に対しても、社内でも誰にも何の相談も出来ないでいる私の心中を察して頂けると思います。

 

 (中略)

 

 今回の件でよく反省をし、償いをして、今度は○○君の「素晴らしい才能」を「世の為人の為」に役立てて欲しいと思います。

 晴れて連絡が出来る様に成りましたら、私宛に必ず御一報下さい。待っております。

 捜査に協力をし、一日でも早く社会復帰が出来る様、心より待ち望んでおります。

 健康にはくれぐれも気を付けて、元気を出して頑張って下さい。

 

                                             平成十六年五月二十日

                                                   ○ ○ ○ ○

 

平成16年5月23日(日) 勾留13日目

 昨日は、夕食前後に調べがあり、後のほうは調書作成だった。

 2度目の検事調べのとき、留置管理課長にいただいたアドバイスが、本当に役に立っている。


 「いちばん大事なのは、とにかく自分の納得のいく書類を作ってもらうこと」

 「気に入らない部分は、1箇所でも、一言一句でも、納得いくまで直してもらう」

 「あなたの立場をよくできるのも、悪くできるのも、あなたしかいない」


 上記のことを念頭に置いて、私は供述に臨んでいるのだが、担当の○○刑事も、それを許してくれる人だった。

 上質紙に供述調書として印刷する前に、一度下書きとしてプリントアウトしたものに、私にボールペンで訂正を入れさせてくれるのである。

 昨晩もそんな調子で、「させてやろうと → させられるべきだと」、「加わった → 変わった」など、何箇所も訂正させてもらった。

 

 ○○さんは、「形」と「原理原則」にこだわる刑事だ。

 「被疑者の目の前で割り印を押す、ということを、最近はやらない刑事も多い。でも俺は、それはよくないことだと思っている」と言って、私の目の前で、調書の各ページに割り印するのだ。

 刑事といい担当さん(看守をこう呼ぶ)といい、いい人に恵まれたと思う。

 これも日ごろの行いが、よかったからだろう。

 

 日月火と調べはない。○○刑事が、出張に出ているのである。

 水曜からガンガン調書をまく、と言っていた。となると勾留満期は6月1日だから、26日からの1週間で、3~4本の調書をまくことになる。

 それともなければ、月火に検事調べが入りそうだ。

 昼飯後からおやつまでの時間を、寝て過ごした。夜眠れなくなるリスクもあるが、寝ていると時間が過ぎるのが、早い。

 

 【余白メモ】

 

 「言いようのない疲労と倦怠」 「不可解な、下等な、退屈な人生」      By 芥川龍之介 「蜜柑」

 

 

 【過去の過ちを振り返って】

 

 留置場では、1日2冊まで本・雑誌が読める。

 差し入れか購入、備え付けもあるにはあるがボロボロに変色した古本だ。

 上記芥川は備え付け。

 

 


平成16年5月22日(土) 勾留12日目

 昨日は便通が4回もあった。かと思えば、今日は朝から下痢だ。

 留置場のトイレの壁は、透明なアクリル板で、ドアも右隅を切り取ったように、三角に開いている。

 自傷行為防止のため、音も含めて中の様子が分かるようになっているのだ。もちろんカギもかからない。

 十分嫌だが、昔に較べればマシだと思うようにしている。昔私はバイク事故で数ヶ月間寝たきりだったが、その際には4人部屋で、しかもベッドに寝たままで、便器を使って用を足さなければならなかったからだ。

 

 その後運動。壁に囲まれた10畳ほどのスペース(外は見えない)で、喫煙者は2本だけ、自分で買ったタバコを吸えるのだ。火は警察官が点けてくれる。警察官にタバコの火を点けさせるとは、場所が場所でなければ殿様気分だ。

 ほかにも監視の警察官が何人もいるのだが、その中の2人が、「あーぁ、俺も大学行っときゃよかったよ」と言い合っていた。2人とも、20代半ば過ぎくらいだろうか。

 

 私の前では同房の保険金詐欺がしゃがみ込み、別房の車泥棒となにやらヒソヒソ話をしている。

 坊主頭に白髪が多く混じる保険金詐欺は、×大商学部卒だ。

 「大学出たってこんなもんなんですよ」と思ったが、言えなかった。大学出たって馬鹿なのは、私も同じだからだ。

 

 そういえば昨晩、看守が書類を持ってきた。

 それには、「被疑者取調未了」「関係人聴取未了」「実況検分未了」などと書かれており、要するに「勾留を10日間延長する」というものであった。ガックシ。


  

 【余白メモ】

 

 運動の時間に月水金、ひげそり、つめきり、みみかきできる。

 

 

 【過去の過ちを振り返って】

 

 留置場では、被留置者の自殺防止ということについては、徹底されている。

 入房時には、服についているヒモは抜かれる。

 房内には、ハンカチ以外は持ち込めない。

 房の鉄格子には目の細かい金網が張られ、モノが吊れないようになっている。

 房内は、ただのコンクリートの四角い箱という感じで、何も出っ張りはない。

 トイレ内も、配管はすべて壁の中に入っており、何も出っ張りはない。

 ドア取っ手のネジに至っても、ネジの頭が溶接で焼き潰されていて、ネジが取れないようになっている。

 しかし、私はそこで考えた。

 基本的に房内では、ジャージとかの部屋着だ。

 ズボンで首を絞めたら、どうなるだろうか?

平成16年5月21日(金) 勾留11日目

 午後、昨日できなかった実況検分を署の3階で。

 留置場のある2階から3階まで、署内を腰縄手錠で歩いたのだが、一般の人数人に見られた。

 手錠を隠すカバー(ブルマというらしい)を使うかと聞かれたのだが、面倒だからいいと言ったのだ。

 

 ネットにつなげるPCが、生活安全課にしかないということで、ここで 、PC実演。

 壁には「植えてもよいけし 植えてはいけないけし」、「Stop MDMA」といったポスターが、乱雑に貼られている。

 部屋の中では、2人の刑事が怒鳴っている。


 初老の刑事。席取りからして、これが課長だ。

 「それは出頭拒否ということですか? 出頭してください? 出頭してください? 出頭拒否とみなしますよ! 興奮なんかしてませんよ! あなたがそうやってワーワー言うから!」

 話の内容からして、駐車違反のようだ。

 出頭しないとどうなるんですかと担当の刑事に聞くと、「逮捕の必要性が生じてくるよね。逃亡の恐れありってことで」とのことだった。駐車違反ぐらいで逮捕されてはかなわない。

  「土日は警察はやってませんよ。当直勤務員がいるだけですよ。 仕事? じゃあね、○日の日曜なら私が当直でいるから、受付で呼んで…。 必ず出頭してください! 必ず出頭してください!」

 初めて知った。警察でも週末はやっていないのだ。


 若い刑事。受話器を両手で持ち、見えない相手に恐縮している。 

 「あ、そういう場合はですね、一度こちらに来ていただいて、被害届を作成していただくことになると…」

 受話器から女の声が漏れ聞こえてくる。こちらはストーカー被害のようだ。


 生活安全課員もいるところでの実演だ。

 私の課の若い刑事が鳴った電話を取り、「はい、二課です!」と言ったら、相手が電話を切り、やべ間違えちったよと言った。

 

 IBMの古いノートパソコン。常時接続ではなくダイヤルアップなのは、不正アクセスを警戒してのことか。しかし机には、メーラーのパスワードが付箋に書かれて貼りっぱなしだ。

 何気なく「お気に入り」を見たら、「2ちゃんねる」「警察警務を考える会」というのが見え、刑事が元に戻せと怒った。


 犯行時のパソコン操作を、再現していく。

 検分官は別の刑事だが、専門知識に乏しく、ちょっと待てちょっと待てと言って、なかなか進まない。

 私が操作するそばからバチバチ写真を撮っていくのだが、その写真を撮った鑑識の女性のおなかがグルグル鳴って、しきりに照れていた。かわいい。


 午後入浴があったのだが、どうせならあの鑑識の人に会う前に入りたかったものだ。なぜならばここでの入浴は、5日に1度だからだ。20分間2人1組で入る。

 入浴後、調べ。調書を1本。コーヒー2杯飲ませてもらった。

 15:25に房に戻れた。ギリギリおやつに間に合った。

 

 なんと留置場には、おやつの時間があるのだ。15:00~15:30までの30分間、決められた5セットから計2000円まで購入したものを、食べられる。

 飲み物はお湯だ。白湯などうまいとは決して思わなかったし、病気のとき薬を飲むときのものだと思っていたが、ここにいるとお湯がうまく感じてしまうのが怖い。

 ポテチ一袋のほとんどを食った。多めに食うと晩飯まで腹が持つし、なにより毎食の仕出し弁当だけでは、味気なくて物足りないのだ。

 

 明日は土曜日だ。××ではみんな必死で勉強しているのだと思うと、本当に切なくなる。

 午後から少し調べの予定がある。時間が潰れ、気が紛らわせられる。

 それだけが、唯一の救いだ。

 

 【余白メモ】

 

 Aセット 〔オレオ・あられ・ポテチ〕  Bセット 〔パピロ・カール・ハートチップル〕  ABは500円


 Cセット 〔ロッテカスタードケーキ・切り餅揚げ・リッツ・ポテチ〕


 Dセット 〔サラダせんべい・ハートチップル・ホームパイ・コーヒーあめ〕

 

 Eセット 〔歌舞伎揚げ・かりんとう・オレオ・のりピー〕                   CDEは1,000円