平成16年5月31日(月) 勾留21日目
朝飯を食い終わってすぐ、看守が「今日検事調べだから運動して」と呼びに来た。
ひげそりをして、腰縄付きの手錠を掛けられる。
手錠の中心は輪になっていて、一列に並んだ前の人からその輪にロープを通していき、ロープの両端は護送警官の腰につながれる。
そしてバスまで移動するのだが、まるでその様子は、たちの悪い電車ゴッコだ。
区検に着き、例の鉄格子の小部屋(同行室という)に押し込められる。
7人・3人・3人という房があり、今日私は3人のほうで、同じ警察署の人と一緒だった。
38歳自営業者の彼は、公務執行妨害での逮捕だ。
飲酒運転中に取り締まりに遭い、その調書を破いたのだという。
「『名前は?』っつーからさ、『なんでだよ、さっき答えただろ』っつったらそのオマワリ、名前の欄に『なんで』って書きやがってさ、『馬鹿野郎、作り直せ』って取り上げて破いたら、逮捕されたんだよ」と言っていた。
11:00~12:20 調べ。13:10~15:30 調べ。
正直な話検事調書は、「一体今まで人の話を何聞いてたんだ」と思わざるを得ないぐらい、ひどいシロモノだった。事実関係の誤りはもとより、検事にインターネットに関する知識がほとんどなく、記載もメチャクチャだ。
念仏のような読み聞かせのあと、事実及び警察調書と大きく異なる2点だけ、訂正してもらった。
検事調書は裁判での証拠となることぐらい、私も分かっている。しかしこの検察事務官上がりの副検事は、逆らうと途端に機嫌が悪くなるのだ。だから、思ったことが言えない。
任意性もへったくれもない。世の中は思った以上に、不条理に満ちているのだ。
同行室に戻ると、自営業のかわりに中国人が入っていた。
日本語が下手でよくわからなかったのだが、偽造パスポートのあっせんで捕まったらしい。
34歳で、日本では日給13,000円の解体屋の仕事をしていたらしいが、パチスロにはまり、給料は全部使ってしまったのだという。
中国には妻と13歳、4歳の子供がいるらしいが、仕送りもしていなかったらしい。
その中国人のところに看守が来て、「じゃあ起訴されましたのでね、これ起訴状です。で、10日間の勾留延長がつきましたから」と書類を見せたのだが、日本語が不自由なため、「あと10日いるだけでいいのだ」と勘違いしたらしく、ぬか喜びしていたのだが、その後通訳から説明を聞いて、ひどく落ち込んでいた。
4時、5時と時間が過ぎていく。
午後5時半になりました、という市内アナウンスを聞いて、私は全てが終わったことを知った。
今日は、起訴も不起訴も何もなかった。全ては、勾留満期の明日に持ち越しだ。
留置場に戻ったのは、6時半を過ぎていた。
それから飯を食って、風呂だった。
すでに入浴は済んでいるということもあって、検察庁に行っていた3人は1人ずつ、ゆっくり入らせてくれた。
私は1人なのをいいことに、浴槽の中で爪で垢をこすったり、胸毛を抜いたり、小便をしたりした。
場内で1,2のモラリストを自認する私もこうなのだから、きっと他の連中もやっているだろう。
9時消灯。
ふてくされて、寝た。
【過去の過ちを振り返って】
自営業は留置場にいたので、この月末、資金繰りが回らなくなった恐れがあるそうだ。
家族もいて、本当に追い込まれているようだった。