平成16年5月27日(木) 勾留17日目
昨夜のインド人は、一夜で別房に移った。
別房の特定商取引法違反は、今日は検事調べのようだ。
私と同じ日に逮捕されたというのに、向こうは連日の朝から晩までの苛烈な取調べで、やつれていた。
私はといえば相変わらずあったりなかったりで、あっても短い。
刑事が、「今日は1時間勝負」などといって、1時間程度で終わってしまう。
本当に退屈な日常、調べがあったほうが、時間が経つのが早いのだが・・・。
保険金詐欺が手紙をしたためている。金の無心だ。
兄弟に金を差し入れてくれと頼んでいたようだが無視され、今は知人に当たっている。
書き出しはどうするのだろうか。 というのも、私も○○先生に連絡することを考えているからだ。
といっても、金の無心ではない。答練の問題を送ってもらえないだろうかという話だ。
私は初犯だし、6月1日に起訴になっても、執行猶予がつくかもしれない。
そうなれば、ギリギリ試験には間に合うかもしれない。
全ては「かもしれない」だが、やはり一応の準備はしておきたいのだ。
兄は受験申し込みを、してくれない「かもしれない」が。
書き出しはどうしよう。
やはり、「前略 突然ですが、私は今留置場におります」と書くしかないだろうか。
【余白メモ】
人間は、時として、充たされるか充たされぬか、わからない欲望の為に、一生を捧げてしまう。
その愚を哂(わら)う者は、畢竟(ひっきょう)、人生に対する路傍の人に過ぎない。
By 芥川龍之介 「芋粥」
【過去の過ちを振り返って】
昨日兄が持ってきた手紙は、非常に私を苛立たせるものだった。
来てくれたのは次兄だったが、長兄の手紙に激怒したのだった。
激怒といってもたかが知れている。自由を奪われているのだから、カッカカッカ来るだけだ。
ひどく説教臭いその手紙に、私は、「自分に酔ってるんじゃねえのか?」という返事を書き、それは今日まで禍根を残すこととなる。
他人である上司の手紙に涙し、肉親である兄の手紙には憤る。
家族関係とは、かくも難しいものであるか。
肉親に対しては、依存心と反発心、遠慮と無遠慮、愛着と憎悪といった相反する気持ちがないまぜになり、自分でもどういう決着をつけたいのかが、分からない。
【長兄からの手紙】
探したのだが見つからない。破り捨てたのかもしれない。
【特定商取引法違反】
私と同日に逮捕された彼の罪名は、「特定商取引法違反+詐欺」である。
埼玉で先日あった、認知症の姉妹にリフォーム業者が押し寄せて云々という、あんな感じである。
DIYで数千円で買える、床下を支える工具? を言葉巧みに取り付け、数百万を請求したそうだ。
どういう仕組みになっているのかはわからないが、やはりその家にも次から次へと業者が押し寄せたらしい。
彼は下っ端で、社長は逃げたという。
朝から晩まで連日、厳しく追及されているが、彼は単なる下っ端だったから、肝心なことは何も知らされていなかっただろう。