ビッグダディⅢ | ||Φ|(T|T|)|Φ||    監獄☆日記    ||Φ|(T|T|)|Φ||

ビッグダディⅢ

 ビッグダディⅢが放映された。

 今回の最大の見どころは、やはりビッグダディの「元妻」が島まで会いに来たことだろう。

 

 それに先立って「行きたい」という手紙が届いたとき、ビッグダディは「気に入らんな」と言った。

 それはそうだろう。この元妻は、手が掛かる極限の乳飲み子を含めた8人もの子供を置いて、出て行ってしまったのだから。「何をいまさら」という気持ちがしたに違いない。

 加えてただの「別れた妻」というだけの話ではない。なんとその元妻には、ビッグダディとの離婚後にできた三つ子(うち2人は弱視のようだ)がいたのだ。

 その三つ子の父親とは、別れたらしい。


 おかずが2品といういつもの食卓に加えて、テーブルには元妻が作った料理が並び、子供たちは喜んで手をつける。

 しかし、ビッグダディは箸を伸ばさない。

  

 突堤で釣り糸を垂らすビッグダディと2人きりになったところを見計らい、元妻は切り出す。

 「一緒には暮らせんかね?」

 ビッグダディは即座に返した。

 「なんで俺がまたお前と一緒に暮らさなきゃいかんのだ」

 

 私は心底、それでいいと思った。

 ビッグダディは離島の集落で8人と暮らし、元妻は地方都市で三つ子と暮らす。

 元妻が来てからのビッグダディの異様な緊張と疲労困憊ぶりを見ると、もうお互いの人生はこの先交わることなく平行線のままであったほうが、ビッグダディにはいいだろうと思ったからだ。

 

 事態は急展開する。

 元妻は、一度は名古屋の地元に戻ったものの、何やかやと理由をつけて、仕事まで辞めてまた奄美に戻ってきてしまうのだ。

 ビッグダディはひとつ屋根の下に寝ることなく、公民館で1人で寝る。

 

 突然再び押し掛けてきた元妻に対するビッグダディの感情を、番組は「怒り」「怒りのマグマ」と表現していたが、そうではないだろう。

 おそらくあったのは、「もうウンザリ」「もう絶対に関わりたくない」というテンションの低い感情だ。

 

 しかし、この夫婦には何があったのだろう。

 元妻はときどきビッグダディを「清志」と呼び捨てにしていたし(ビッグダディのほうが年上であるにもかかわらず)、ビッグダディは「お前に清志と呼ばれると今でもビクッとする」と言っていた。

 整骨院の患者には、「すごい気疲れするんですよ…」「気疲れっていうのともまた違うんだけどなぁ」「大体がおっかないもんじゃないですか女房って。家の中で」「その感覚がどうしても残ってるんですよね。そばにいるだけで…疲れちゃう」とこぼしていた。

 「友人の保証人になって借金を背負ったビッグダディが妻に逃げられた」という話は初回にあったが、しかし今回の番組を見ると、離婚届を出したのはビッグダディのようだし、しかもビッグダディは元妻に完全に愛想をつかしているように見える。

 

 「お前が一番失敗したのは、やっぱり出て行ったことだよ」と、ビッグダディは言った。

 「お前が出て行った時に1歳、2歳、3歳、4歳。それに5歳、6歳、7歳、8歳。」

 「そこから7年(自分1人で)やってきたわけじゃん」

 「(ここから)お前にかき回されたくないんだよ」

 

 結局、復縁・同居ということにはならなかった。

 事情を知らないムラ社会が復縁をはやしたて、テレビ局が面白い番組作りのために無言のバイアスをかけるなか、自分の意志を貫き通したことは、立派だと思う。

 

 ただし「退路を断った」元妻には戻るべき場所がなく、ビッグダディは結局、島内の小都市である名瀬に住むことを許可する。

 そこでの住居を診療所に改造して、経営する接骨院の分院とし、三つ子と元妻はそこに住まわせる。

 そして週に何度かビッグダディが通って治療を行なうというのだ。

 加えて、バスで1時間以上かけて名瀬の高校へ通う長女と、いずれ通うことになる2人を、そこに住まわせるのだという。


 「歩み寄り」という言葉を使っていたから、復縁を容認するような大きな心境の変化があったというわけではなさそうだ。

 ビッグダディとしてはおそらく、「苦虫を噛み潰すような」心境なのではないだろうか。

 

 ビッグダディは言う。

 「家族だと思いますよ。うーん。夫婦じゃないっていうだけで」。

  

 閉塞的な状況に、ビッグダディはまたもや突破口を開けた。