利尿剤?
ソフトバンクのガトームソン投手が、ドーピング禁止薬物である「フィナステリド」を服用していたとして、ガトームソン本人に出場停止20試合と、球団に制裁金750万円が課されることになったという。
フィナステリドとは成分名であって、商品名はプロペシアであり、実は私も飲んでいる 。
私が飲んでいるのはインドのシプラ社というところが、米メルク社の特許を無視して勝手に作ったコピー品であるフィンペシアだが。
フィナステリドはドーピング禁止薬物リストの分類では、「利尿剤およびその他の隠蔽物質」というカテゴリーに分類されていることから、報道では「利尿作用により、筋肉増強剤を早期に尿中に排泄させ痕跡を消す作用があるから禁止」とされている。
しかしこれは間違いなのではないか?
私の理解では、「もしテストステロンを摂取しても、それが分からなくなるから禁止」ということだからだ。
この理屈では、利尿作用にはまったく関係がない。
テストステロンは筋肉増強作用がある男性ホルモンで、睾丸で産生されるが、化学合成されたものを服薬や注射などの方法で、人為的にも体内に追加できる。これがドーピングである。
ここで、フィナステリドの作用機序を考えてみる。
フィナステリドは、毛根を細くして脱毛しやすくさせる物質である「ジヒドロテストステロン」の、産生を抑制するものだ。
ジヒドロテストステロンは、テストステロンの一部が代謝の過程で変換されて産生されるものだが、その変換は「5-αリダクターゼ」という酵素による。
フィナステリドは、この5-αリダクターゼの働きを阻害して、テストステロンがジヒドロテストステロンに変換されるのを抑制しようというものだ。
それはどういうことかというと、ドーピング検査においてはフィナステリドの服用によって、「体内のジヒドロテストステロン量から逆算してテストステロン量を推定するのを困難にする」ということを意味する。
ややこしいが、例えば「通常はヒトの体内において10単位のテストステロンから6単位のジヒドロテストステロンに変換される」という統計があった場合、ある人の体内にジヒドロテストステロンが6単位残留していたら、もともとあったテストステロンは10単位だったということが逆算で推定できる。
しかしフィナステリドが作用することによって、20単位のテストステロンからジヒドロテストステロンが6単位しか変換されないということになれば、ある人の体内にジヒドロテストステロンが6単位残存していたことをもって、「この人の体内にはもともと10単位のテストステロンしかないから、ドーピングについてはシロ」という断定ができなくなるわけだ(数値は適当)。
だからフィナステリドが隠蔽薬として禁止されているのだと、私は理解しているのだが、本当のところはどうなのだろう。
これを見ると 「利尿作用があるため禁止薬物である」という説明をしているのは、どうやらソフトバンク球団のようである。
少しwikiでも触れているが(wikiリンク) 、しかしガトームソンの件について、フィナステリドの何が悪かったのかは書かれていない。
飲用するタイプの発毛薬としては、フィナステリドしかないのが現状である(飲用のミノキシジル錠というのもあるにはあるが、頭髪に限定せず体毛すべてを濃くしてしまう。またもともとが降圧剤として開発されたものなので、リスクが大きい)。
「薬物に対しての認識が甘い球界」などと新聞には書かれていたが、だんだん少なくなってゆく髪の毛を前にして飲むなとは、ガトームソンが少しかわいそうだ。
薄毛の人間は、発毛させるためなら、何でもやってしまうものだからである。
なお個人的には、フィナステリドには、まったく利尿作用を感じない。
コーヒーのほうがよっぽどトイレが近くなる。