平成16年6月7日(月) 勾留28日目 | ||Φ|(T|T|)|Φ||    監獄☆日記    ||Φ|(T|T|)|Φ||

平成16年6月7日(月) 勾留28日目

 ひげそり、爪切り、耳かき。平日ならではの特典だ。

 今日からやっとエアコンが入った。6月1日からという話もあったのだが、財源不足による節約の徹底で、それも遅れた。

 

 平日は手紙の受発信もできる。私は待っている手紙があるので、それも待ち遠しい。

 しかし受発信については中を検閲されるし、「発信お願いしまーす」と出した手紙についても、実質的な投函は翌日となり、結果として先方への到着が遅れることになる。

 これも「不自由さ」ということの、ひとつの表れである。

 

 待っている手紙というのはほかでもない。「保釈融資申込」の返事である。

 しかし世の中にはいろいろな商売があるもので、これは「利息を取って保釈金を貸す」ビジネスである。

 保険金詐欺のところへ、「新聞に載ったのを見た」という福岡の業者から、DMが来たのだ。

 保釈金とは、起訴後から判決までの間を家で過ごさせる代わりに、身代金として裁判所に預け入れる金のことであり、逃亡せずちゃんと出頭すれば全額返還されるので、貸すほうとしてはリスクが少ないといえる。

 聞くところによれば、保釈金は普通のサラリーマンでも150万は必要とのことで、金がない人は保釈申請できず、留置場で過ごすことになる。

 

 それを借りようというわけだ。

 年利29.2パーセントという出資法上の最高利率ではあるが、こんなところにいつまでもいるよりは、よっぽどマシだ。

 保険金詐欺も、「手紙来たら見せて」と乗り気である。4ヶ月居ても、やはり監獄は嫌なものらしい。

 しかし今日、私に手紙は来なかった。

 

 そして午後、久しぶりに調べがあった。余罪を3週間に1度のペースで、3件検事送りにするという。

 当然ながら、その間の保釈は認められない。

 いったい私は、いつになったら出られるのだろう?

 

 

 【過去の過ちを振り返って】

 

 自分にまとまった額の預金があればよかったが、それもない。

 兄の嫁さんが結構金を貯めこんでいるらしいので、それを貸してもらおうかとも思っていたのだが、兄の手紙に怒りの返事を書いたことで、それも頼める状態ではなくなった。

 留置場で一文無しでは、みじめな思いをすることは、以前にも書いた。

 起訴前からつけられる私選弁護士を頼んだり(頼んだこともすぐやってくれたり、弁護活動も精力的だ)、力のある検事出身の弁護士を頼んだり、保釈が認められたりするのも、結局はカネだ。

 「地獄の沙汰もマネー次第」は真実だし、 ♪ お金は大事だよ~

 

 

 【力のある検事出身の弁護士】

 

 いわゆる「ヤメ検」といわれる、検事出身の弁護士がいる。

 ヤメ検は、刑事事件にめっぽう強い。警察・検察とツーカーだし、捜査機関のやり方を熟知しているからだ。

 私の検事調べのとき、担当検事にヤメ検の弁護士から電話がかかってきた。当然ながら、依頼を受けた事件を「不起訴にせよ」という圧力だ。

 電話の会話を聞いていたが、「共犯は犯行を認めていて、目撃者が証言をしてもよいと言っていて、否認しているのは本人だけ」という状況だそうだ。

 私の検事調べが終われば、あとは月報の〆めがあるだけで、その日の検事の仕事はもう終わりだそうで、ヤメ検が区検まで検事に会いに来ることになり、検事はそれを恐縮して受けた。

 副検事は元検察事務官だから、ヤメ検は元の上司だ。また司法試験合格者であるヤメ検には、検察事務官採用試験を通っただけの副検事は、引け目を感じるだろう。

 こうした力関係の構図の中で、黒はグレーになり、グレーは白になる。

 そしてその色を変えうるのは、まぎれもないカネの力なのである。

 

 

 【月報の〆め】

 

 検事の成績考課のひとつに「月の起訴件数」があるため、「月末には起訴が立て込む」というウワサがある。

 本来なら起訴不起訴は、事案の内容や情状などにより決められるべきで、むやみに社会復帰を困難にする犯罪者の烙印(スティグマ)を押すべきではないとする、これが起訴便宜主義の本旨だ。

 このウワサが本当だとすると、現代日本社会の不条理であり、不合理であり、闇だ。

 ただ、裁判員制度の導入を目玉とする司法制度改革は、この闇の部分にも光を当てる可能性がある。

 裁判員制度が成功するか否かは、制度に臨む国民の姿勢にかかっているといっても、過言ではないだろう。