平成16年5月19日(水) 勾留9日目
1日1回か2回、署長と副署長が巡視に来る。
そういうときだけ、看守もはりきって、ドアを開けるときに「だいいちとびら、開錠ウォーーー!!」と大声を張り上げるが、普段は言わないか、言ってもボソッと、「はい、かいじょ」程度だ。
保険金詐欺は朝の便所掃除が好きだ。
「人が嫌がることをすると徳が積める」からだと言っていたが、今さら何やっても遅いと思う。
調書1本まく。
この調べ室には、鉄格子のはまった窓がある。
自転車に乗ったおばさんや、ランドセルの子供たち、洗車をする隣家の人が見える。
心底うらやましい。
窓の外には低い家並みが連なる。私はこの田舎町に、何の縁もゆかりもない。
なぜこんなところにいるのかと言えば、被害者がこの町に住んでいるからだ。
警察署前に車を停められ、私を引っくくってきた誇らしげな刑事たちに挟まれ取調室に通されて、逮捕された後は、外が見えない留置場に直行だった。
周囲の位置関係がどのようになっているのかもわからないし、まわりがどうなっているのかも、まったくわからない。
大変なストレスと孤独だ。
これ以上、会社に迷惑を掛けられない。退職願を書いた。
○○さん宛てに出した。上手く処理してくれるだろう。
今日の教訓 : 警察も馬鹿ではないということは、捕まったあとに分かる
【過去の過ちを振り返って】
この教訓は、保険金詐欺が言っていたものだ。
ガサ入れでかなりの証拠物をもらさず持ち出され、出た感想が「あいつらだって馬鹿じゃないですよ」。
犯行時から数年が経っており、逮捕時はかなり慌てていたらしく、ハローキティの絵がついた、幼児用の小さい歯ブラシを使っていた(孫のだそうだ)。
【警察用語】
調書を取ることを、「まく」という。
供述することは、「うたう」という。