平成16年6月12日(土) 勾留33日目
今日は男に、パソコンとインターネットに関する教えを請われた。
「今回はパソコンを覚えて帰る」のだそうだ。
ほとんど知識のない人間に説明することは大変だったが、驚くほど飲み込みが早く、実に的確な質問を返してくるのには、吃驚した。
人間は、ソフトとハードからなるのかもしれない。
姿形をハードだとするなら、その人間の思想や行動様式はソフトだ。
保険金詐欺も、同年輩の警察官と、一見して変わらない。
じゃあ何が違うのかといえば、両者を動かすソフトウェアなのである。
今、男にねだって買ってもらった文庫本、東野圭吾「白夜行」を読んでいる。
デタラメに長いし、しかも飽きさせない超大作で、贅沢な暇つぶしだ。
うるさい看守に、「なんで人の本持ってるの?」と、宅建問題集とテキストを取られた。
悔しい。
【過去の過ちを振り返って】
私はもともと神経質なたちで、しかもここ5~6年来の不眠症なのだが、環境の激変でまったく眠れなくなってしまった。
人付き合いというのはもともと気を使うものだが、留置場では極めて高いコミュニケーション能力が要求されるということは、簡単に想像がつくだろう。
昨日までまったく見も知らない人間が、24時間、プライバシーがまったくない状態で、顔をつき合わせているのだから。
俺は今正常だろうか? 気が狂うんじゃないか? という不安が、尽きることがなかったのがこの時期だ。